訪問日:2024年3月24日(日)
ホテルニューグランド
神奈川県横浜市中区山下町、山下公園や横浜中華街からすぐ近くにあるヨーロッパスタイルの正統派ホテル『ホテルニューグランド』。
オープンは1927年(昭和2年)12月1日。
船が日本と外国との往来の主流の時代、横浜港はその玄関口として多くの渡航者が訪れたことから、現ホテルニューグランド周辺の山下町界隈には、外国人向けホテルの代表格「グランドホテル」をはじめ、多くのホテルが軒を連ねていたとのこと。
しかし1923年(大正12年)9月1日の関東大震災で、華やかだったホテル街もろとも横浜は瓦礫の街に。
『ホテルニューグランド』は震災の瓦礫で埋めたてて作られた山下公園の正面に建設され、横浜市民の復興への期待を受けつつ、名称は公募で決定されたとのこと。
こちらのホテルでは開業当初から「最新式設備とフレンチ・スタイルの料理」をキャッチフレーズとして掲げ、特にレストランに力を注ぎ、現在の日本の食文化に多大な影響を与えたといわれています。
中でも『ホテルニューグランド』発祥といわれている料理の3つが「シーフードドリア」、「スパゲッティ ナポリタン」、「プリン・ア・ラ・モード」。
その歴史については公式サイトに以下のように書いてあります。
【シーフード ドリア】
発祥の伝統料理
いまや定番の人気メニューである「ドリア」。
お米を使ったグラタンのような料理です。
この「ドリア」、実は日本で誕生しました。
『ホテルニューグランド』で初代総料理長を務めたサリー・ワイルが考案した料理です。
サリー・ワイルは、1927年、ニューグランド開業の際にパリから招かれたスイス人シェフ。
フランス料理のシェフでしたが、西欧料理全般に長けていて、イタリア料理やスイス料理なども得意としていました。
サリー・ワイルは、メニューに「コック長はメニュー外のいかなる料理にもご用命に応じます」と記し、お客様の要望に合わせて様々な料理を作って提供していました。
ある時、滞在していた銀行家から、「体調が良くないので、何かのど越しの良いものを」という要望を受け、即興で創作した一皿を、お出ししました。その時作ったのは、バターライスに海老のクリーム煮を乗せ、グラタンソースにチーズをかけてオーブンで焼いたもの。
好評だったこの料理は、”Shrimp Doria”(海老と御飯の混合)として、レギュラーメニューになり、ホテルニューグランドの名物料理の一つになりました。
弟子達により、他のホテルや街場のレストランでも提供されるようになり、今や全国の洋食の定番料理として大人気となった「ドリア」。
ホテルニューグランド発祥のオリジナル・ドリアは、名物料理として今でもコーヒーハウス「ザ・カフェ」でお召し上がりいただけます。
【スパゲッティ ナポリタン】
終戦後、1945年8月30日に到着した連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーによって米軍による占領が開始され、以降1952年までの間、ホテルニューグランドはGHQ将校の宿舎として接収されました。
彼らの持ち込んだ軍用保存食の中にスパゲッティとトマトケチャップがあり、米兵たちは茹でたスパゲッティに塩・胡椒で味付けをし、トマトケチャップで和えた物をよく食べていたそうです。
接収解除後、ホテルには彼らが持ち込んだ大量のスパゲッティが残されていたことから、戦後2代目の総料理長を担った入江茂忠は「ホテルで提供するに相応しいスパゲッティ料理を作ろう」と、苦心の改良を重ねました。
もともと、当ホテルでは、初代総料理長サリー・ワイルより受け継いだカルーソー(仔牛の細切り肉とトマトベースのデミグラスに合わせた料理)やボロネーゼなどのスパゲッティ料理があり、入江は新たなメニューとして、トマト本来の味わいを生かしたホテルならではの料理を提供しようと、ニンニクと玉葱の微塵切りを飴色になるまでよく炒め、生のトマト、水煮のトマト、トマトペーストを加え、ローリエとオリーブオイルを入れてソースを作り、スパゲッティと合わせ、この料理を「スパゲッティ ナポリタン」としてお客様へお出ししました。
ホテルニューグランドのスパゲッティ ナポリタンは、コーヒーハウス「ザ・カフェ」でお召し上がり頂けます。
【プリン・ア・ラ・モード】
終戦後7年間、GHQに接収されていた当ホテルは、その期間、将校とその夫人が宿泊していました。
ホテル内のボールルームでは、アメリカから送られてきた最新の映画が上映されるなど、横浜の中心にありながら、ここだけ外国のような特殊な場所であったため、デザートに関しても、将校夫人が喜ぶ、見た目にも華やかさで満足できるボリュームのものを出す必要がありました。
「お料理好きの奥様から、アメリカの有名なお菓子学校の教科書をいただき、 それでいろいろ勉強したり、サジェスチョンを受けたこともあったようです。 味だけでなく、量もアメリカの方々に合わせないといけません。
向こうのデザートは、 本当にドーンッといった感じで出てきますよね。プリン一個だけというわけにはいきません。そこで、アイスクリームや、アメリカから送られてきた缶詰の果物と組み合わせて出したんです」
ただ、これだけの量のデザートを従来のデザート皿にのせるのは難しかったため、コルトンディッシュという特殊な器に盛りつけて供されました。
この洗練されたスタイルから、このデザートは、“プリン・ア・ラ・モード”と呼ばれるようになりました。
今も、「プリン ア ラ モード」には、その器が使われています。
コーヒーハウス ザ・カフェ

これらの料理は現在でもホテルニューグランドの本館1階にある『コーヒーハウス ザ・カフェ』で提供されています。
『コーヒーハウス ザ・カフェ』はホテルならではの洋食や軽食、スイーツまで、多彩なメニューを気軽に味わえるカフェレストランで、宿泊者以外でも利用可能。
ちなみにこちらのお店は2020年に食べログの洋食百名店に選出されています。
また横浜髙島屋8階ローズダイニング内には姉妹店「ル グラン」があり、こちらでもホテル発祥の料理を提供しているそうです。
アクセス
ホテルニューグランドは元町・中華街駅の1番出口から徒歩1分、2番出口から徒歩2分の距離。
駐車場はレストラン利用の場合、2000円未満で1時間無料、2000~5000円までで2時間無料、5000円以上で4時間無料になります。
混雑状況
この日は日曜日、お店には13時半頃に到着。
この時どうやら満席のようで、店前には沢山のお客さんが待っていました。

最初は店内で受付をし、その後順番待ちシステムに登録することで、順番が近くなった際に呼び出してくれるというスタイル。
順番が近くなったらお店の近くで待ち、店内に案内される際は口頭で呼ばれます。
この時15組待ちで、受付時の店員さんの話によると、大体1時間から1時間半くらいが目安とのこと。
待ち時間は実際に1時間ちょいでした。
ちなみに食事で利用する場合に限り、電話やオンラインでの予約も可能。
詳細は公式サイトで確認出来ます。
メニュー・商品ラインアップ




価格は一般的なカフェレストランよりもかなり高めの印象。
メニュー写真は見にくいですが、公式サイトで写真付きのPDFデータが掲載されています。

今回目当ての発祥料理3種類を全て楽しめる「大人のお子様ランチ」(※追加料金でプリンアラモードに変更する必要あり)というメニューもありましたが、今回は同行者と2人での訪問なので、それぞれ単品で注文し、シェアしながらいただきました。
感想

【シーフードドリア】3289円(税・サービス料込)
バターライスに海老のクリーム煮を乗せ、グラタンソースにチーズをたっぷりかけてオーブンで焼いているとのこと。
見た目はシンプルながら、中にはエビを中心に貝柱も入っていて具沢山。
貝柱はプリッと、エビはブリッブリの歯応えある弾力が楽しめてとても美味しいです。
バターライスはソースがたっぷりと絡みとろりとした食感、クリーミーで濃厚な味わいを堪能でき、値段は高めながら感動の美味しさでした。

【スパゲッティナポリタン】2340円(税・サービス料込)
まろやかでコクがある優しい味わいのトマトソースで、麺はモッチリとシコッとが合わさったようなやや柔らかめの食感。
具材はベーコンやマッシュルームが混ざっている感じで少なめでした。
ちなみにこちらのナポリタンは生のトマトやトマトペーストで作られていますが、ケチャップを使った大衆的なナポリタンを広めたのは、同じく横浜にある老舗洋食店の「センターグリル」といわれています。
「センターグリル」の創業者は、元々ホテルニューグランドの初代総料理長サリー・ワイル氏が経営していた別のホテルに務めていたそうで、ナポリタン考案者の2代目総料理長入江茂忠氏とも交流があり、ホテルニューグランドの影響が大きそうですね。

【プリン ア ラ モード】2024円(税・サービス料込)
プリンはプルンと柔らかな質感で、卵の味わい濃いめのレトロタイプ。
生クリームはミルクの味わいがとても濃厚で驚き、アイスクリームは芳醇甘めでキャラメルのような印象を受ける美味しさ。
フルーツはどれも甘くて全体のボリュームもあり、大満足の美味しさでした。
特にシーフードドリアとプリン・ア・ラ・モードが好みで、横浜の良い思い出になりました。
ご馳走様でした!
公式サイト等
公式サイト
https://www.hotel-newgrand.co.jp/the-cafe
食べログ
ザ・カフェ
050-5594-8903
神奈川県横浜市中区山下町10 ホテルニューグランド本館 1F
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