訪問日:2025年5月16日(金)
カツオの町 愛南町

生鮮カツオの水揚げ量が四国1位であり、愛媛県で唯一のカツオの水揚げ基地「深浦港」を有する愛南町(あいなんちょう)。
愛南町のカツオ漁の歴史は古く、江戸時代の貞享元年(1684年)、内海浦(愛南町旧内海村、旧御荘町)に10隻(47人)、外海浦(旧西海町、旧城辺町)に16隻(84人)、合わせて26隻、漁業者131人が記録されているとのこと。
旧5か町村が市町村合併した平成16年(2004年)10月にはカツオが愛南町の「町の魚」に指定されています。
カツオは傷みが早く、釣り上げてから時間とともに鮮度も味も下がっていく魚であるため、深浦港では漁場で捕獲し操業を終えたらすぐさま帰港する「日戻りカツオ」が水揚げされています。
その中でも条件を満たしたカツオは「愛南びやびやかつお」という名前で平成20年にブランド化に向けて取り掛かり、愛南町の公式サイトによると条件は以下の通り。
●一本釣りまたは曳縄釣りされたもの
●釣り上げてすぐに活け締め、血抜き処理をしたもの
●釣り上げたその日のうちに水揚げされたもの
●水揚げした後、ハイブリッドアイスで保管されるもの
●愛南漁協が管理し、品質の確かさを認めたもの
「びやびや」は鮮度が非常に高く、身の締まった状態の魚に使う愛南町地元の浜言葉(方言)。
「びやびやかつお」は鮮度が非常に高いため、食感は餅のように弾力があってモチモチ、生臭さは皆無で、トロリととろける濃厚な脂がのっているにも関わらず、さっぱりとした旨みが広がるのが特徴とのこと。
漁法や管理方法における厳しい基準をクリアしたカツオのみが「愛南びやびやかつお」として認められ、認定した個体には1匹ごとにナンバリングしてタグを付けて品質を管理しています。
また「愛南びやびやかつお」は船上で釣り上げてすぐに活け締め行うことが条件ですが、カツオ水揚げ後に漁協職員が目利きした抜群のカツオを素早く脱血処理したカツオは「愛南日戻りびやかつお」と呼ばれており、「愛南びやびやかつお」に勝るとも劣らないカツオとのこと。
確かな味を提供するために、現在は愛南漁業協同組合が品質管理などにおいて公認した数店舗のみでの取り扱っているため、「愛南びやびやかつお」や「愛南日戻りびやかつお」はオンラインショップなどでの購入も出来ず、「日戻りカツオ」のみ販売しているそうです。
愛南漁協の公式サイトには「愛南びやびやかつお」と「愛南日戻りびやかつお」取扱店として「市場食堂」、「船波」、「ゆらり内海」、「お食事処なにわ」、「一本松温泉あけぼの荘」の5店舗が紹介されていました。
ただ、こちらは現在掲載可能の店舗及び組合で把握している店舗のみで、他にも取扱店はあるとのこと。
愛南町ではカツオは3月頃から12月頃まで水揚げされるそうですが、特に旬の時期は春の「初カツオ」シーズンである4~6月頃だそうです。
ゆらり内海

今回訪れたのは、上述の「愛南びやびやかつお」の取扱店として紹介されていたお店の一つ、愛南町須ノ川の国道56号線沿いにあるお店『ゆらり内海(うちうみ)』。
オープンは平成15年(2003年)10月という情報が出てきました。
こちらは宇和海の海水をお風呂に使用した「潮湯」が楽しめる温浴施設。

館内のレストランでは「愛南びやびやかつお」をはじめ、「媛スマ」、「ヒオウギ貝」、「媛っこ地鶏」、「甘とろ豚」など、地場産品を使った様々な料理が楽しめます。
アクセス
混雑状況
この日は平日の金曜日、お店には11時半頃に訪問。
この時レストランは先客3〜4組くらいで空いていました。
メニュー・商品ラインアップ







今回はカツオ目当てでしたが、「愛南びやびやかつお」は見当たらなかったものの、入口横に「日戻りびやかつお入荷してます」という看板を確認して歓喜!
必ず入荷しているとは限らないので、これは運次第ですね。
あと本来は注文予定だった「ヒオウギ貝」も残念ながら休止中でした。
しかし他に食べてみたかった「媛スマ」があったので、今回は「日戻りびやかつお」と「媛スマ」それぞれの刺身単品を注文しました。
感想

【日戻りびやかつお単品】1200円(税込)
透明感がある鮮やかな赤身で、ねっとりとなめらかな舌触りに、噛むとモッチリとした弾力の良さが際立ちます。
生臭さやクセは無く、あっさりと上品な旨みと、力強いカツオの風味が広がり、流石の美味しさでした。


【媛スマの炙りと刺身単品】1680円(税込)
媛スマとは
「スマ」はサバ科マグロ族に分類されるスマ属の魚で、サバのような特有の縞模様に、背びれはカツオ、尻尾や頭はマグロに似ていることが特徴。
スマガツオ、ヤイト、ヤイトガツオなど様々な呼び名があり、愛南町では「オボソ」とも呼ばれているそうです。
天然のスマは別の魚を狙った漁の際にたまたまかかるなどで水揚げされる程度で、漁獲が少ないためにお店に並ぶことがほとんどなく、「幻の高級魚」といわれる希少な魚。
平成24年度に愛媛大学がスマの研究を開始し、平成25年度から愛媛県との共同研究が開始、平成28年5月にはスマの完全養殖に成功。
令和元年11月には愛媛県が主導する形で愛南町、愛南漁協、愛媛大学、生産者と共に「媛スマ普及促進協議会」を設立し、愛媛県産養殖スマを包括する新たなネーミングを「媛スマ」に決定。
養殖のスマはふ化して半年から1年で2kg程になるとても成長が早い魚。
マグロの近縁種であり、通年きめ細かな脂がのり全身トロといわれる身質、食味は臭みがなくさっぱりとしており、滑らかな口当たりが特徴とのこと。
「媛スマ」の中でも最高級ランクのものは「伊予の媛貴海(いよのひめたかみ)」という名称で販売されており、愛媛県が示す品質基準は次の6つ。
①魚体が2.5kg以上
②魚体の脂質含有率25%以上
③魚体の変形等がない
④一本釣り等で取上げ
⑤船上活〆・脱血
⑥高機能氷による輸送
「媛スマ」が食べられる店(飲食店)、買える店(販売店)については愛媛県の公式サイトに一覧が掲載されています。
https://www.pref.ehime.jp/page/4814.html
見た目は少し色が淡い中トロのような感じですが、味もまるでマグロのトロを食べているかのような、風味豊かでこってりとした重厚な味わい。
炙りの方は脂が溢れてジューシーな口当たり、香ばしさもたまらない感動の美味しさ!
カツオも美味しかったですが、媛スマは特に感動が大きくて、また必ず食べたいと思います。
まだ食べたことがない「愛南びやびやかつお」や「伊予の媛貴海」の味も気になりますね。
ご馳走様でした!
公式サイト等
公式サイト
食べログ
ゆらり内海
0895-85-1155
愛媛県南宇和郡愛南町須ノ川286
コメント