訪問日:2025年7月6日(日)
ほうとうとは
山梨県の代表的な郷土料理として、全国的な知名度を誇る「ほうとう」。
「ほうとう」は小麦粉を練って幅広に切った麺を、かぼちゃを軸とした野菜・山菜などたっぷりの具材と共に、味噌仕立ての汁で煮こんだものが基本形ですが、生地の形状や味付け、具材などは地域・家庭・お店などによって様々。
「ほうとう」はうどんとは異なり麺を打つ際に塩を混ぜないことが一般的。
塩分を抜くためにあらかじめ茹でる必要がなく、打粉のついた生麺状態から煮込むため、汁にとろみがついて冷めにくいのが特徴。
お店では1人分ずつ鉄鍋で鍋料理や鍋焼きうどんのようなスタイルで提供されますが、家庭では家族分を大鍋で作り、丼や椀に一食分が盛られ主食として提供されるそうです。
埼玉県の「煮ぼうとう」や群馬の「おっきりこみ」など、山梨の他にも群馬、埼玉、長野などで「ほうとう」に近い料理が食べられています。
「ほうとう」はとても歴史が古く、文献上は江戸時代以降に多く登場するそうですが、名前の由来や発祥地、時期の定説は無く、以下のように諸説あるようでした。
●「ほうとう」は「餺飥(はくたく)」の呼び名で、平安時代から貴族が儀式等で食べていたことが知られている。
●戦国時代の武将、武田信玄が考案した陣中食で、自分の刀で食材を切ったことから「宝刀」と名付けられた。
●製粉は穀物を杵で「たたく」ことから、粉にする作業を「ハタク」と呼び、穀物の粉を「ハタキモノ」と呼称するようになったため、「ほうとう」の語源は「ハタク」あるいは「ハタキモノ」が料理名に転用された。
●空いた手間と時間で「放蕩」することが出来るために、「ほうとう」という名称になった。
山梨県では稲作に適さない山間部では近世に養蚕が普及し、餌となる桑の裏作で麦の栽培が行われるようになり、「ほうとう」などの粉食が発展した歴史があるとのこと。
山梨県が次世代への継承に取り組んでいく郷土食176品目「やまなしの食」のうち、さらに代表的な47品目としてしぼられた「特選やまなしの食」に選定。
2007年に農林水産省が全国各地から選定した「農山漁村の郷土料理百選」には「吉田のうどん」と共に「ほうとう」も選出されています。
山梨県内にはほうとう専門店が数多くあるので、旅行に来た際は「ほうとう」の食べ歩きが定番の楽しみの一つ。
ほうとう蔵 歩成

今回訪れたお店は、山梨県山梨市に本店を構える『ほうとう蔵 歩成(ふなり)』。
創業は昭和54年(1974年)。
店名の由来は将棋の駒「歩」で、一番弱い駒であるものの、一歩一歩前に進み相手の陣地に入ることで強い駒の「金」に変わることから、「今は小さい存在でも、一歩一歩前だけを向いて進んでいこう」という思いが込められているとのこと。
こちらのお店は山梨県内のお店でほうとうの美味しさを競う「ほうとう味くらべ大会」において、2011年~2013年に3連覇を果たし、殿堂入りを達成したことで有名。
店舗は2025年7月に公式サイトを確認した時点で、「本店」、「フルーツライン店」、「河口湖店」、そして山梨県産フルーツのジェラート専門店「Funari GELATERIA」というお店も展開しています。

私は2023年に「河口湖店」に行ったことがあり、看板メニューである「黄金ほうとう」が美味しかったのでお気に入りになったお店。
今回はほうとうの他、定食や一品メニューなど、全店舗の中で最もメニューが豊富という本店へ初訪問です。
アクセス
場所は山梨市駅からすぐ近く。
駐車場は店舗裏にありました。
混雑状況
この日は日曜日、お店には21時過ぎに訪問。
この時店内は客入り7割くらいの印象で、結構お客さんが多かったです。
メニュー・商品ラインアップ













メニューは本当に豊富ですが、肝心のほうとうのメニューを撮り忘れるという失態。
食べログなどに過去の写真が掲載されています。
今回は「黄金ほうとう」と、同じく山梨名物の「鳥もつ煮」、「馬刺し」も注文し、同行者とシェアしながらいただきました。
感想

ドリンクは「ジャスミン茶」319円(税込)を注文、お通しは無しでした。


【黄金ほうとう豚肉入り】1650円(税込)

素材の内訳が詳しく書いてありますが、こちらのお店の味噌は厳選した米麹の赤味噌、白味噌と椎茸と昆布を秘伝の比率でブレンドし、かぼちゃやアワビの肝のペーストを加えていることが特徴。
そこに京都の老舗福島鰹社と研究を重ねた、さば節、かつお節、昆布からとった出汁を合わせ、味噌の美味しさを引き出しているとのこと。
塩気は優しくてマイルドですが、魚介系の出汁の旨味が濃くとても奥深い味わい。
麺は平打ち太麺、柔らかさと適度なコシを兼ねたモチモチ食感。
具材はかぼちゃ、人参、白菜、えのき、しめじ、舞茸、ゴボウ、大根、里芋、油揚げ、豚肉など、具沢山で食べ応えがあります。
豚肉は脂が乗ったこってりとした肉質で旨味が濃厚、4枚くらい入っていました。
野菜はどれもよく味が馴染んでいて美味しかったです。

【とりもつ煮】605円(税込)
山梨名物「鳥もつ煮」
山梨県甲府市発祥のご当地グルメ「鳥もつ煮」。
「鳥もつ煮」は鳥のレバー、砂肝、ハツ、キンカン、玉ひもなどを、甘い醤油のタレで照り煮にした料理で、お好みでレタスや火を通したししとうなどと食べるのが特徴。
発祥のお店は甲府市にある大正2年(1913年)創業の蕎麦屋「奥藤(おくとう)本店 国母店」。
2代目が昭和25年(1950年)頃に肉屋から「捨てられてしまう鳥のもつをどうにかできないか?」と相談されたのが始まりだそうです。
当時は貴重だった醤油と砂糖でこってりと煮た「鳥もつ煮」は大好評。
いつの間にか甲府一帯に広がり、蕎麦屋、ほうとう店、居酒屋、定食屋などの定番料理になったとのこと。

山盛りのネギの下にゴロゴロたっぷり、パサつかずしっとりしたレバーをはじめ、プリッと弾力のあるハツや、コリコリした砂肝も入っていたと思います。
甘辛濃口の味付け、シャキシャキピリ辛のネギがさっぱりとして相性が良く、こちらも美味しかったです。

【馬刺】979円(税込)
山梨名物「馬刺し」
全国的に有名な熊本県をはじめ、福島県、長野県、山梨県などでも名物となっている「馬刺し」。
山梨県は律令制の時代から貢馬の国として知られていたそうで、「甲斐の黒駒」は貴族達の憧れのブランドだったとのこと。
また山梨県は主要街道である甲州街道が通り、富士山の信仰登山が盛んで荷揚げ用に馬が沢山飼われていたことから、身近で安く手に入る馬肉を食べる習慣が広まったといわれています。
同じく山梨の名物である「吉田のうどん」の具にも甘辛く煮た馬肉が用いられることが特徴であり、古くから山梨で馬肉文化が受け継がれてきたことがわかります。
名物になっている他の地域と比較すると、山梨県は馬肉料理専門店が少ないと思いますが、郷土料理店や居酒屋などで「馬刺し」は定番メニューになっており、提供店自体はかなり多い印象。
柔らかくモッチリした食感で、臭みのない上品であっさりした味わい。
生姜醤油でもニンニク醤油でも美味しかったです。

【馬レバー刺】979円(税込)
本当はハツ刺が食べたかったのですが、残念ながらこの日は入荷無しとのこと。
プルンとした柔らかさと、コリシャキした歯応えが混ざった不思議な食感で、臭みやクセもなくまろやかでコクがある味わい。
タレは塩油、ニンニク醤油、生姜醤油でしたが、特にパンチの利いたニンニク醤油が好みでした。
ご馳走様でした!
公式サイト等
公式サイト
食べログ
御食事処 歩成 本店
0553-23-0253
山梨県山梨市上神内川1690
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