訪問日:2021年5月5日(水)
仙台牛タン焼きとは
ずんだ餅・笹かまに並び、宮城県仙台市の三大名物の一つといわれる『仙台牛タン焼き』。
仙台牛タン焼きは、牛タン焼きと、麦飯、テールスープ、浅漬け、 南蛮味噌(青唐辛子の味噌漬け)と共に定食スタイルで提供されるのが大きな特徴。
牛タンは先端部分(タン先)と裏側(タン下)などの固い部位を除いた部分を厚切りにして、塩味やタレをつけて数日熟成させたものを炭火等で焼き、一般的に焼肉のタン塩では定番のレモン汁はつけません。
仙台の食文化を守り引き継ぎ、全国の人々に本当に美味しい牛タン焼きを食べてもらいたいという思いから、仙台を代表する名店が集まって平成14年2月に結成された「仙台牛たん振興会」の公式サイトに、牛タンの歴史について詳しく書いてありました。
仙台牛タン焼きの誕生は昭和20年代、終戦直後の混乱期で仙台市内は失業者であふれ、町のあちこちで戦争未亡人が飲食店を開いていたそうですが、手軽に開業できる焼き鳥屋は特に人気だったそうです。
牛タン焼きの生みの親という「太助」の初代店主である佐野啓四郎氏も、当時は和食の職人として焼き鳥中心の飲食店を経営していたそうです。
当時は食糧難ということもあって、鶏肉だけではなく、豚肉や牛肉など、様々な素材を焼き料理として出していたそうですが、調理方法が簡単なので、ヒット商品を出しても周りのお店に次々と真似されてしまったそうです。
そこで誰にも真似のできない自分だけの食材を探し、洋食屋を経営していた親友の小野氏へ相談したところ、牛タンを使うことを提案されたそうです。
小野氏の知り合いの洋食屋に行き、タンシチューを食べて美味しさに驚いたことから牛タンの魅力に惹かれたものの、手間がかかることから試行錯誤し、昭和23年(1948年)頃に切り身にして塩味で寝かせて焼くという現在の牛タン焼きの原形ができたそうです。
仙台牛タン焼きの歴史は他にも有名な説があり、第二次世界大戦後に仙台に駐留してたアメリカ兵が大量に消費する牛肉の余剰部分であるタンやテールを有効活用し、佐野啓四郎氏が牛タン焼きの専門店を開業したことが始まりという「米軍残り物説」。
当時のアメリカ進駐軍はアメリカ本土から牛肉を解体したものを輸入していたため、牛タン自体はほとんど輸入されていなかったと「仙台牛たん振興会」では「米軍残り物説」を否定しています。
しかしWikipediaには佐野氏はむしろ公式見解として認めており、自信のある元祖とイメージダウンを嫌う新規参入業者との間で見解の相違が生じていると書いてありました。
こういった説が生まれたのには、仙台の牛タン焼きは仙台牛などの国産よりも、殆どがアメリカ産やオーストラリア産といった輸入物が中心であることも関係しているようです。
「仙台牛たん振興会」の公式サイトには、佐野啓四郎氏のすすめから「太助」で修業をし、後に「旨味太助」というお店を開いた娘婿である佐野八勇氏を取材した記事も掲載されていました。
そこでは牛タン焼きの誕生の背景については「仙台牛たん振興会」で書いてある内容の通りであり、戦後しばらくは牛タンを確保するのが大変だったため、仙台や山形県内の食肉加工場を回って手に入れたとのこと。
その後進駐軍向けに牛肉の扱いが増えたことから、オーストラリア産を輸入するようになったという流れが書いてありました。
その後も現在に至るまで輸入品が中心になっているのは、国産は一頭買いが多いことから部位買いが困難であること、単価が安いことなどが理由としてよく挙げられています。
輸入物では牧草飼育が中心でかたい肉質になりやすいオーストラリア産より、穀物飼育が中心で適度に脂肪が付いて柔らかいアメリカ産の方が人気のようです。
牛タン焼きが仙台名物になったのは、1982年頃に商工会議所と県と市の観光課の人から「牛タンを仙台名物として売り出したい」という提案があったことから、テレビや雑誌、新聞などで紹介され、一気に全国に知られるようになったとか。
また、仙台の牛タン焼きが定食スタイルになったのは、当時の日本人の食生活に合わせて定食屋の一汁三菜型にならったこと、「麦飯」は当時米不足であったことや栄養価が高いこと、「浅漬け」は電気冷蔵庫が無かったため保存性が高かったこと、「南蛮味噌」は佐野氏の出身地である山形県の伝統料理であったこと、炭火焼なのは都市ガスが一般化していなかったことなどが理由といわれています。
「味 太助」と「旨味 太助」
佐野啓四郎氏は平成6年(1994年)に他界したため、現在は長男の佐野和男氏が「味 太助」という屋号で「牛タン焼発祥の店」を掲げて営業しています。
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「味 太助」は「旨味 太助」のことを現在でも分店として公式サイトに掲載していますが、「旨味 太助」では「味 太助」はかつて姉妹店として営業していたものの、諸般の実情から一切関係がなくなったという記載がありました。
なんだかややこしい事情がありそうですね。笑
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前回私は「味 太助」を訪問したので、今回は『旨味 太助』を訪問。
アクセス
場所は「勾当台(こうとうだい)公園駅」から徒歩5分くらいの距離。
駐車場は近隣コインパーキングを利用。
混雑状況
この日は祝日の水曜日、お店には14時半頃に訪問。
この時先客は5人でしたが、すぐに続々とお客さんが訪れて満席近くになりました。
メニュー・商品ラインナップ
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メニューは牛タン定食、単品、うなぎ系とシンプルな構成。
うなぎがあるのは意外でしたが、牛海綿状脳症(BSE)発生によるアメリカ産牛肉輸入停止の影響を受けた際、価格が高騰して牛タンが入手困難となったため、炭焼きの技術を活かしたうなぎの蒲焼きで急場をしのいだそうですが、そのままメニューに定着したとのこと。
今回は「牛たん定食」を注文。
A~Cがありますが、違いは牛タンの枚数のようなので一番安いAを注文。
感想
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【牛たん定食A(4枚)】1700円(税込)
牛タン焼き4枚、麦ご飯、テールスープ、白菜の浅漬け、南蛮味噌、これぞ仙台の牛タンという王道の定食スタイル。
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牛タン焼きはプリプリとコリコリの間くらいの歯応えがある食感。
塩気は牛タンの旨味が引き立つ丁度良い塩梅、香ばしさが相まってとても美味しいです。
テールスープはほんのり甘い優しい出汁の旨味が広がる、とてもあっさりした味わい。
骨付きのホロッとと柔らかなテールもゴロゴロ入っていました。
白菜の浅漬けはやや塩気が強めで、良いおかずになります。
南蛮味噌は結構辛味が強いので、苦手な方は注意です。
前回食べた「味 太助」と比較したかったのですが、4年前なので記憶がかなり曖昧です。笑
個人的にはなんとなく「旨味 太助」の方が好みの牛タン焼きだったのと、値段が安かったので、満足度では上回っていた印象。
焼肉で食べるのとはまた異なる、独特な魅力がたまらない『仙台牛タン焼き』。
これからもどんどん色んなお店で食べ比べを楽しみたいですね。
ご馳走様でした!
公式サイト等
食べログ
旨味太助
022-262-2539
宮城県仙台市青葉区国分町2-11-11 千松島ビル 1F
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