訪問日:2023年8月29日(火)
「さんまずし」とは
和歌山県南部地域の郷土料理「さんまずし」。
作り方はサンマを開いて内臓を取り、べた塩をして洗い流したあとに酢で締めて、寿司飯に乗せて押さえて形を整え、食べる際は醤油などにつけずにそのまま、柚子やだいだいのしぼり酢を使うとさっぱり食べられるそうです。
家庭やお店によっては、数ヵ月かけて発酵させて作る「なれずし」にすることもあるとのこと。
10月下旬から3月になると、産卵のために三陸沖から寒流にのって熊野灘に南下してくるため、和歌山県の沿岸部全域でサンマがとれるそうです。
特に南方の熊野灘でとれるサンマは、長い時間潮にもまれて身が引き締まり、小ぶりで脂がほどよく抜けているため寿司に適しているとのこと。
元々は米飯や魚の保存食として発展したもので、秋祭りや正月、船の進水祝いなど、行事ごとになると必ず家庭で振る舞うごちそうだったそうです。
現在も正月にはつきもので、祝い事のときは頭をつけたままで押しずしにするとのこと。
潮岬を境に、西牟婁郡では腹開き、東牟婁郡では背開きといった捌き方の違いもあり、大晦日に作って年明けに焼く「焼きさんまずし」もあるとか。
新宮市生まれの作家佐藤春夫さんも「さんまずし」を好んだそうで、『故郷で一番美味しいものは一に「めはり」二に「さんま」』 と常々語っていたといわれています。
「なれずし」とは
「なれずし」は塩・米・魚だけで乳酸発酵した最も原始的なすしの作り方といわれる料理。
その起源については弥生時代から、平安時代から、室町時代からなど、諸説あるようです。
全国各地に様々な「なれずし」が根付いていますが、和歌山の「なれずし」は滋賀県の「鮒ずし」、秋田県の「ハタハタ寿司」(※諸説あり)と共に『日本三大なれずし』の一つといわれ、約800年以上の歴史があるとか。
魚を1ヵ月ほど塩漬けしてその後塩抜きをし、粘りがあって硬く握ることができる古米を塩を加えて炊き、しっかりと握った古米の上に魚をのせて握り込み、殺菌作用のある葉(芭蕉の葉・アセ・バランなど)で巻きつけて紐でくくり、桶に詰めて重石を載せて1~6ヶ月漬け込むとのこと。
魚は有田・日高地方ではサバ、串本から新宮にかけてはサンマやアユなど、その地方でとれる魚が使われるそうです。
東宝茶屋

今回訪れたお店が、和歌山県新宮市の横町にある、「なれずし」をはじめとした郷土料理や、サンマやクジラなど海の幸を使った和食・寿司を提供している人気店『東宝茶屋』。
創業は昭和22年(1947年)。


2代目店主を取材した記事によると、元々この地方の家庭料理だった「なれずし」を、初めて店の料理として提供するようになったのが『東宝茶屋』だそうです。
こちらのお店ではアユ、サンマ、サバ、アマゴなど、様々な魚のなれずしが作られているようですが、特に有名なのが「サンマ」を使ったもの。
サンマのなれずしは数週間漬け込んだものから、完全に液状化してしまった30年物まであるそうで、こちらは1947年創業当初から本漬けして作っている「本馴れ鮓」という独自の商品とのこと。
今回は普通のものと30年物、両方を食べてみたいと思い、行ってみることにしました。
アクセス
場所は新宮駅から徒歩12分くらいの距離。
駐車場は店舗横にありましたが、台数は基本2台、前後に詰めれば4台?という印象。
混雑状況
この日は平日の火曜日、お店には12時40分頃に訪問。
個室があったりでこの時の店内の正確な客入りは不明ですが、まだ空席もあって待ち時間無く入店。
しかし13時過ぎになると新しく来たお客さんがもう満席と断られていたので、少し早くに着いていて良かったです。
メニュー・商品ラインナップ






今回はなれずし目当てだったので注文は迷わなかったものの、メニューを見て気になったのが「イルカ」の刺身。
せっかくなのでこちらも一緒に注文しました。
感想

【さんま馴れ鮓】1430円(税込)
一切れを一口で食べずに、すし飯を少量ずつ食べると口に馴染んできて美味しく食べられるとのこと。
すし飯はネッチョリとした質感、酸味と独特の発酵臭がツンと効いており、サンマも独特な風味はありますが凝縮された旨味があって美味しいです。
別皿の唐辛子醤油も好相性でした。

【三十年物珍味本馴れ鮓】1870円(税込)
一切原型を留めていないドロッとした質感、まるで粥というか、ヨーグルトのような印象も受けます。笑
上に唐辛子と醤油?がかかっているので、混ぜてから食べるとのこと。
また、普通の馴れ鮓をこのペーストにつけて食べるのもオススメだとか。
少量を一口食べただけでも、えげつない酸味と強烈な発酵臭が鼻を突き抜ける、衝撃的な味わい。笑
最初は驚いたのですが、段々慣れてくるとクセになる味で意外といけます。
普通に完食出来ましたが、個人的にはやはり普通の「さんま馴れ鮓」の方が好みという結果でした。

【イルカ御刺身】1815円(税込)
今でも鯨肉を食べる地域は結構多いですが、同じ鯨類ではあるものの「イルカ」になると少し限られてくる印象。
現在でもイルカ漁が行われているのは、和歌山県太地町や静岡県の伊豆地方が有名なようです。
オーソドックスな鯨の刺身よりも、やや黒っぽいものが多いイルカの刺身。
グニッとモチッとした柔らかな食感、最初うっすらと魚のような生臭さも感じましたが、ほとんどクセがなく美味しい肉刺しという感じ。
特に弾力のある食感の脂身がこってりとコクのある味わいで、ニンニクや生姜がよく合い、とても美味しかったです。
やはり鯨の刺身に近い感じですね。
イルカを食べるのも、ドロドロのなれずしを食べるのも初めてだったので、良い経験になりました!
ご馳走様でした!
公式サイト等
食べログ
東宝茶屋
0735-22-2843
和歌山県新宮市横町2-2-12
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