訪問日:2024年9月3日(火)
いぶりがっことは
秋田県を代表する名物として全国的な知名度を誇る「いぶりがっこ」。
「がっこ」は秋田で「漬け物」を意味する方言、「いぶり」は「いぶした(燻した)」という意味で、「いぶりがっこ」は燻製干しのたくあん漬けのこと。
スモーキーな香りとパリパリとした食感がクセになる美味しさで、今では県内全域で作られていますが、かつては県内陸部の農家で作られていた郷土料理といわれています。
たくあん漬けは天日などで乾燥した後に漬け込むのが一般的。
しかし東北地方の日本海側に面する秋田は湿度が高く大根が干しにくい上、大根が収穫される晩秋から初冬にかけては降雪の影響から天日乾燥が出来ず、凍結の恐れもあるため、室内の梁に大根をぶら下げ、囲炉裏の煙を利用して大根を干し、米ぬかと塩などで漬け込んで水分を取り除く独自の手法が定着。
この囲炉裏干しのたくあん漬けが「いぶりがっこ」の原型で、その起源は室町時代ともいわれており、秋田の豪雪地の冬の常備食として食卓を支えたそうです。
昭和30年代に入ると、囲炉裏に代わって薪ストーブが普及し、流通が発達して他の地域から美味しい天日干しの沢庵漬けが秋田でも簡単に手に入るようになったため、次第に家庭では作られず、食べる人も減っていったとのこと。
しかし昭和40年代になるとその味を懐かしみ商品化を望む声が聞かれるようになり、県内の漬け物業者によって商品化が試みられ、その後は家庭で作られるものから物産品として作る生産者が増えていったとのこと。
2017年には「秋田県いぶりがっこ振興協議会」が県内事業者3団体(秋田県漬物共同組合・横手市いぶりがっこ活性化協議会・秋田いぶりがっこ共同組合)により設立され、2019年には「いぶりがっこ」が特定農林水産物などの名称の保護に関する法律(地理的表示法)に基づき、地理的表示(GI)保護制度に登録(登録番号第79号)。
このGI保護制度は、地域に根ざした産品の名称を保護し、「いぶりがっこ」の価値を次世代へ伝え育てるための制度で、以下のようなGIの基準を満たしたものだけが原則「いぶりがっこ」の表示ができます。
【GIいぶりがっこの主な基準】(横手市公式サイトより)
https://www.city.yokote.lg.jp/kanko/1001536/1004796.html
●秋田県いぶりがっこ振興協議会の会員(秋田県漬物協同組合、秋田いぶりがっこ協同組合、横手市いぶりがっこ活性化協議会 傘下の生産者)が生産している
●生産地は秋田県内
●国内産の大根の使用
●ぬか床に40日以上漬け込む
●着色料(食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ)、保存料(ソルビン酸)、甘味料(サッカリン)などの指定添加物を使用していない
スーパーをはじめ、直売所やネット通販など幅広く販売されており、飲食店でもいぶりがっこやいぶりがっこを使用した様々な料理が提供されています。
食材としての認知も高まり、そのまま食べるだけでなく「いぶりがっこチーズ」や「いぶりがっこタルタル」など、いぶりがっこを使用したレシピがインターネットやSNSなどで広がりをみせているとのこと。
また秋田県横手市では2007年以降、山内地域の伝統の味を守り続けると共に更なる品質向上を目指して、毎年「いぶリンピック」といういぶり漬けの味を競うイベントが開催されており、年により若干の変更はあるものの、主に「クラシカル部門」と「フリースタイル部門」の2部門で競われるそうです。
いぶりがっこ本舗 雄勝野きむらや

今回いぶりがっこを買いに訪れたお店が、秋田県湯沢市(旧雄勝町)の下院内常盤町にあるお店『いぶりがっこ本舗 雄勝野きむらや』。
「いぶりがっこ」は他にも「いぶり大根漬」、「いぶりたくあん漬」、「いぶり漬」など様々な呼び名がありますが、こちらのお店は『いぶりがっこの名付け親』といわれています。
創業は昭和38年(1963年)で、現在3代目になるとのこと。
家伝の漬物造りを基に漬物屋として創業し、当初は「シソ巻き山ごぼう」や[たけのこ味噌漬」、「山菜の味噌漬」、「山菜の粕漬」などを販売。
かつて冬季保存食として雄勝野の各家庭で作られていた「大根のいぶり漬け」が食べられなくなってきたことから、昭和40年に家伝の「いぶり漬け」にヒントを得て、製品化に着手。
燻製・発酵試験を行い、酒粕床に樽詰めしたいぶり漬けの販売開始は昭和42年、いぶり漬けの真空パック製品の販売開始は昭和46年。
「いぶりがっこ」として販売されたのは、公式サイトによると昭和47年に『焚き木干し沢庵「いぶりがっこ」』と命名したのが始まりのようです。
ただ、商標権について色々あったようで、商標審決データベースを見ると、きむらやにおいて「いぶりがっこ」という商標は昭和42年11月から使用されていたようです。
オンラインショップもありますが、いぶりがっこといえばこちらのお店と思ったので、今回は湯沢市の直営店まで行ってみることにしました。
アクセス
場所は院内駅から徒歩13分くらいの距離。
駐車場は店舗横にありました。
混雑状況
この日は平日の火曜日、お店には14時過ぎに訪問。
店舗は令和5年にリニューアルしたそうでとても綺麗。
この時先客は1人のみで空いていました。
メニュー・商品ラインアップ


売場の写真はほとんど撮っていませんが、店内には様々な漬物類が並んでおり、商品ラインアップは公式サイトで確認できます。

今回は目当ての「いぶりがっこ」の中で、食べやすい「スライス」タイプと、個包装でお土産にもピッタリな「薪割りおつまみ」の2種類を購入。
感想


【いぶりがっこスライス】580円(税込)



【いぶりがっこ薪割りおつまみ】580円(税込)
どちらも味にはそんなに違いは感じませんでしたが、カットの形状が違うので食感も若干異なる感じ。
コリコリとしたたくあん系の食感に、程良い塩味、酸味、甘味がバランス良く、圧倒的な香ばしさがクセになる美味しさ。

そのままおかずにしても美味しいですし、よくアレンジされているのが「いぶりがっこのクリームチーズのせ」。
まろやかクリーミーな味わいととても相性が良く、ワインやビールのおつまみとしても人気です。
薪割りおつまみの方は自分で食べる他、職場のお土産にも持っていきましたが、おやつをまとめて入れている容器に追加しておいたところ、個包装の真空パックなのに容器の中が香ばしくなりました。笑
甘いお菓子の箸休めとしてもウケが良く、色々な楽しみ方が出来ますね。
ご馳走様でした!
公式サイト等
公式サイト
食べログ
雄勝野きむらや
0120-303-650
秋田県湯沢市下院内字常磐町91
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