訪問日:2025年11月13日(木)
日本一のお茶の産地 南九州市

鹿児島県は全国屈指のお茶産地として知られており、令和6年の荒茶生産量は全国1位で27000トン(全国シェア36.5%)、茶栽培面積は全国2位で8150ヘクタール(全国シェア23.2%)。
生産量は長らく静岡県が全国1位でしたが、静岡県を抜いて鹿児島県が全国1位になったのは初めてのことだそうです。
そんな鹿児島県を代表するお茶のブランドとして知られているのが、南九州市で生産されている「知覧茶」。
「南九州市」は平成19年12月に、古くからお茶栽培が盛んだった頴娃町、川辺町、知覧町が合併したことによって、国内生産量の約17%を占める、市町村別生産量日本一になったとのこと。
平成28年度末まで頴娃・知覧・川辺の旧3町の茶業者は、それぞれが独自のブランドで茶業に取り組んできたそうですが、平成29年4月よりこれから未来永劫に茶業が繁栄することを誓って茶業者が心を一つにするため南九州市の茶銘柄を「知覧茶」に統一。
知覧茶の歴史は古く、川辺地域では1659年に生産が始まり、享保年間には薩州三ヶ寺・宝福寺で栽培された茶が江戸御用として献上されたそうです。
各地域に普及していき、頴娃地域では1836年に頴娃町上別府、新牧の小磯与八、小磯助五郎、山下市左エ門が釘商の帰りに都城から茶の種子を持ち帰り、新牧の小和塚に播種したのが始まりとされているとのこと。
知覧地域では平家落人が知覧町手蓑で茶栽培を始めたという言い伝えがあり、本格的に茶栽培が始まったのは、1872年に島津氏の払下げの山野を開墾したのが始まりとされています。
1896年(明治29年)には川辺地域で鹿児島県内初の製茶機械が導入され、大正時代には茶栽培が一大産業に発展。
戦時中は不急作物として抜根され激減したそうですが、戦後に紅茶の栽培で持ち直し、その後国が貿易自由化を打ち出すと紅茶を撤退させていち早く緑茶へ転換し、銘茶生産に努めて日本一のブランドに成長したとのこと。
南九州市は山と海により形成された丘陵地帯が広がり、寒暖差による霧が多いのが特徴で、紫外線から茶葉を守り、茶葉に含まれる旨味成分の生成を促進するといわれています。
土壌はカルデラの火山灰が堆積していて水はけがよく、ミネラルが豊富にふくまれ、健やかな味わい深いお茶の栽培に最適の環境が揃っているとのこと。
生産量だけでなく高品質でも知られており、全国・鹿児島県茶品評会等で産地賞や農林水産大臣賞等の特別賞を連続で受賞。
さらにお茶の安全性や品質管理を行うG-GAP認証、有機JAS認証など第三者機関による認証を取得し、食品安全や環境に配慮したお茶づくりを行っているそうです。
南九州市を訪れると、美味しいお茶が飲めるだけでなく、お茶を使った料理やスイーツなどのお店も多くあり、様々なバリエーションが楽しめます。
ちなみに「知覧茶」は特許庁の商標登録情報によると、「鹿児島県知覧町産の緑茶・煎茶・粉茶・ほうじ茶・玄米茶・茎茶・ティパックに詰めてなる煎茶」とあり、基本的には緑茶が中心。
紅茶は含まれていませんが、南九州市では紅茶も作られており、「知覧産和紅茶」や「知覧紅茶」といった名称で販売されています。
また一面に茶畑が広がり、開聞岳も望む「茶ばっけん丘(高塚丘)」は絶景スポットとしても知られています。
TEALAN薩摩英国館

今回訪れたお店は、鹿児島県南九州市知覧町にある『TEALAN(ティアラン)薩摩英国館』。
こちらは「紅茶を通して豊かな生活を」をコンセプトに、「薩摩英国館」として1992年にオープン。
当初は英国側から見た日本を紹介する歴史資料を展示するミュージアムと、イギリスの紅茶やお菓子、雑貨等を販売するミュージアムショップの2つの機能を併せ持つ施設として運営していたそうですが、その後要望があって2年後にはティールームも開設。
「薩摩英国館」という名前には「薩摩と英国の架け橋になりたい」という願い、「この知覧というカントリーサイドを誇りに思い、楽しんで暮らせる場所であってほしい」という思いが込められているとのこと。
開館30年の節目を迎えた2022年には、「TEA」と「CHIRAN(知覧)」で「鹿児島と英国のつながり、さらに人と人を紅茶で繋ぐ」という意味を込めて、現在の名前である『TEALAN薩摩英国館』に変わったそうです。

こちらのお店では世界の紅茶の他、地紅茶として知覧産オリジナル紅茶の「夢ふうき」を販売・提供しています。
「夢ふうき」は枕崎の茶業試験場で誕生し、1995年に品種登録された日本で初めての紅茶・半発酵茶兼用品種「べにふうき」という品種で、創業者はその香りと味わいに魅了されたそうです。
2000年に出会った当時はまだ栽培農家もいなかったことから、山を開墾して2001年から有機無農薬栽培を始め、自家農園で「べにふうき」を作っているとのこと。
2007年にはの英国グレート・テイスト・アワードに「夢ふうき」と名付けた紅茶を初出品し、日本人としても日本産の紅茶としても初の金賞を受賞。
日本紅茶協会が認定する「おいしい紅茶の店」にも認定されています。
公式サイトによると、系列店と思われる「BUNROKU 文禄堤薩摩英国館」というお店も大阪府守口市にあるようです。
南九州市を訪れると知覧茶を飲みたくなりますが、今回は紅茶も良いなと思い、『TEALAN薩摩英国館』へ初訪問です。
アクセス
お店の近くに電車は通っておらず、今回は車での訪問。
駐車場は店舗前にありました。
混雑状況
この日は平日の木曜日、お店には12時10分頃に訪問。

この時先客は無しで私たちのみでしたが、徐々にお客さんが増えてきました。
メニュー・商品ラインアップ





アフタヌーンティーとしてはお手頃価格であり、予約無しで気軽に楽しめる「コージーアフタヌーンティー」が特に魅力的。
しかし既に昼食を食べた後だったので、今回は軽めに『スイーツセット 紅茶・カップサービス』を注文。
目当ての「夢ふうき」はスペシャリティーになるので、カップなら+100円の追加料金がかかります。
感想



提供までの時間にはお店のシンボルでもある「ロンドンバス」の見学も可能で、中に入らせてもらいました。

売店コーナーでは紅茶や雑貨、食器など様々な商品が販売されています。


【スイーツセット 紅茶・カップサービス 】1200円(税込)
紅茶は「夢ふうき シングルエステート」、スイーツは「知覧緑茶のスコーン」を選択。
「夢ふうき」は春から初夏にかけて一番摘み、それから秋まで4回ほど紅茶製造されるそうで、季節によって香りも色も異なるとのこと。
「シングルエステート」は秋から販売される紅茶で、英国グレート・テイスト・アワード2007から出品した年全てで金賞受賞、2014年にはニツ星を受賞した実績を持つとのこと。
風味豊かで少し濃いめですが、程良い渋味も感じる奥深い味わい。

同行者は「夢ふうき ファーストフラッシュ」を注文したので、少しシェアしていただき、飲み比べをしてみました。

「ファーストフラッシュ」は低温期の休眠後最初に芽吹いた葉で製造した紅茶で、英国グレート・テイスト・アワード2012で三ツ星金賞を受賞したそうです。
こちらの写真では表面に埃のようなものが浮いているように見えますが、これは毛茸(もうじ)と呼ばれる、芯芽の表面についている産毛であり、摘採の丁寧さや素材の良さの指標でもあるとのこと。
爽やかな香りの良さが際立つすっきりとした飲み口で、色合いも若干淡い感じ。
かなり印象が異なる味わいで、個人的には「ファーストフラッシュ」の方が好みでした。
「知覧緑茶のスコーン」は生クリームといちごジャムが添えられており、サックリホロッとした食感、緑茶の風味豊かでほろ苦い後味。
とても和風ですが、こってりとした生クリームとフルーティなジャムとも相性抜群で、とても美味しかったです。
紅茶も美味しくて、店内の雰囲気も素晴らしいお店でした!
ご馳走様でした!
公式サイト等
公式サイト
https://www.satsuma-eikokukan.jp
食べログ
TEALAN薩摩英国館
0993-83-3963
鹿児島県南九州市知覧町郡13746-4


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