訪問日:2026年8月1日(土)
かじか亭

長野県飯山市の旧富倉小学校の跡地にある、富倉地区の郷土料理「富倉そば」が看板メニューのお店『かじか亭』。
1991年(平成3年)4月に「富倉ふるさとセンター」として始まり、富倉そばや笹ずしの提供を行ってきたそうですが、2016年末にいったん営業を休止し、2017年4月に運営者が変わって再開。
その後、2025年4月19日に「富倉そば振興会」の運営で新装開店し、地域に伝わるそばや郷土料理を受け継いでいます。
同会の会長で店主を務めるのは、大阪府出身の広瀬大司さん。
以前は不動産管理業に携わっていましたが、兵庫県から移住し、2024年4月に飯山市の地域おこし協力隊へ着任したとのこと。
きっかけは、富倉地区の「はしば食堂」で食べた富倉そばと、そのおもてなしに感銘を受けたこと。
担い手が減っていると知り、少しでも力になりたいと考え、地元でそば打ちを学ぶほか、そばやオヤマボクチの栽培にも取り組んできたそうです。
今回は「幻のそば」とも呼ばれる「富倉そば」をはじめ、「笹ずし」や「いもなます」など、飯山の郷土料理を一度に楽しめる人気NO.1メニュー『笹ずしセット』を目当てに訪問しました。
富倉そば

長野県飯山市の富倉地区に古くから伝わる郷土料理「富倉そば(とみくらそば)」。
小麦粉の代わりに「オヤマボクチ」という植物の葉から取り出した繊維をつなぎに使う、独特の製法が特徴のそばです。
富倉地区は、かつて北信濃と越後を結ぶ交通路が通っていた、新潟県境に近い山間地域。
冬には深い雪に覆われ、小麦の栽培が難しかったことから、周辺に自生するオヤマボクチをつなぎに利用するようになったそうです。

オヤマボクチは地元では「山ごぼう」とも呼ばれるキク科の多年草。
使うのは根ではなく、葉の裏側に生えている白いうぶ毛のような細かな繊維である「茸毛(じょうもう)」。
オヤマボクチは漢字で書くと「雄山火口」であり、葉の裏側の茸毛が火を起こす際の火口(ほくち)として使われていたことが名前の由来といわれています。
この繊維を取り出す作業にはかなりの手間がかかり、葉1kgから取り出せる繊維はわずか4~5gほど。
オヤマボクチはそばの風味を損ないにくく、小麦粉を加えずに打つことで、そば本来の香りを楽しめるのも魅力。
強いコシとしっかりした歯ごたえがありながら、ツルツルとしたなめらかな喉越しを味わえるといわれています。
「幻のそば」とも呼ばれていますが、その背景には、かつて交通の不便な山間地域で受け継がれ、地域外の人が食べる機会が少なかったことがあるそうです。
さらに、打ち手が少なくなっていること、つなぎの準備からそば打ちまで多くの手間を要し、一度にたくさん作ることが難しい点も、その呼び名につながっています。
なお、オヤマボクチをつなぎに使うそば文化は、富倉地区以外の北信濃にも伝わっており、代表的なものに山ノ内町の北志賀高原・須賀川地区に伝わる「須賀川そば(すがかわそば)」、木島平村の「名水火口そば(めいすいぼくちそば)」があります。
地域ごとに名前や特色は異なりますが、いずれも身近な植物を生かした、雪国ならではのそば文化が息づいています。
「富倉そば」は2007年(平成19年)11月に、飯山市の選択無形民俗文化財に指定。
現在は打ち手の育成や製法の記録など、手間を惜しまず受け継がれてきた食文化を、次の世代へ伝える取り組みも進められています。
笹寿司

長野県飯山市を中心とする北信地域や、新潟県の上越地方に伝わる郷土料理「笹寿司」。
長野県では、クマ笹の葉の上に酢飯を盛り、山菜などの具材を彩り良くのせたものが親しまれています。
起源には諸説ありますが、川中島の合戦に向かう上杉謙信の軍勢が富倉を通った際、地元の人々が笹の葉を器代わりにして、ご飯や山菜などを振る舞ったのが始まりという言い伝えがあります。
こうした謙信との結び付きから、飯山市では「謙信寿司」とも呼ばれています。
具材は、ぜんまい、わらび、たけのこ、しいたけ、くるみなど、山の幸が中心。
大根の味噌漬けを使った具や、錦糸卵、紅しょうがなどをのせるもの、酢飯にもち米を混ぜる作り方もあり、地域や家庭によって具材の組み合わせや作り方は様々。
笹の葉1枚ずつに盛ったものは、手に持ち、笹を少しずつ下へ引きながら食べられるため、箸を使わずにいただけるのも特徴。
一方、富倉には、専用の寿司箱に笹の葉、ご飯、具材を何段も重ねて作る、押し寿司風の製法も伝わっています。
文化財としては、2000年(平成12年)に「飯山市富倉の笹寿司」が長野県の選択無形民俗文化財に、2007年(平成19年)には「富倉の笹ずし」が飯山市の選択無形民俗文化財に選ばれています。
飯山市の解説では、県の選択対象は押し寿司風、市の選択対象は笹の葉1枚ずつにご飯と具をのせるものとして区別されています。
古くから祝い事や祭りなど、ハレの日にもてなす料理として親しまれてきた笹寿司。
現在も地元の飲食店で提供され、道の駅などでも販売されています。
飯山市の戸狩温泉では、宿で笹寿司作りを体験することもでき、食べるだけでなく、作りながら地域の食文化に触れる機会も設けられています。
いもなます

長野県飯山市を中心とする北信地域に伝わる、じゃがいもを使った郷土料理「いもなます」。
「なます」は食材を酢で和えた料理で、おせち料理の定番である、大根と人参を使った「紅白なます」などがよく知られています。
こちらの「いもなます」は、細切りにしたじゃがいもを油で炒め、酢・砂糖・塩で味付けする料理で、甘酸っぱい味わいとシャキシャキとした食感が特徴。
日本有数の豪雪地帯である飯山周辺では、かつて冬に新鮮な野菜を手に入れることが難しく、保存が利くじゃがいもを利用して生み出されたといわれています。
じゃがいも料理が日本で広く定着したのは明治時代以降といわれていますが、飯山周辺では江戸時代から伝わるといわれており、日常の茶受けや寺の精進料理、冠婚葬祭など人が多く集まる機会でも振る舞われてきたとのこと。
彩りに人参を加える場合もありますが、仏事の際には入れないという習慣もあるそうです。
独特の歯触りを生み出すポイントは、じゃがいもを細く切って十分に水にさらし、でんぷんを洗い流すこと。
さらに、炒めて全体に油が回ったところですぐに酢を加えることで、シャキシャキとした食感を保つのだそうです。
身近な材料で作る素朴な料理ながら、手間をかけて仕上げる、地域のおもてなしの一品でもあります。
2007年(平成19年)11月20日には、飯山市の選択無形民俗文化財に指定。
現在も家庭や地元の飲食店で受け継がれており、今回訪れた『かじか亭』でも、富倉そばや笹ずしとともに楽しめる郷土料理の一つとして紹介されています。
アクセス
お店の近くに駅やバス停などはなく、今回は車での訪問。
飯山駅から車で20分くらいの距離で、国道292号線の富倉トンネル手前を左折するとお店があります。
駐車場は店舗前にあります。
混雑状況
この日は土曜日、お店には11時10分頃に訪問。
この時店内は先客2組のみで空いていました。
メニュー・商品ラインナップ





今回は目当ての人気NO.1メニュー『笹ずしセット』を注文!
感想

【笹ずしセット】1480円(税込)
こちらのお店では地元飯山産のそばを都度製粉してそばを打っているそうですが、天候などの影響で年度によっては飯山産以外のそば粉になることがあり、その日使っているそばの産地品種は店頭に明示しているとのこと。

この日は「富倉産信濃一号」でした。

そばはシコッと歯ごたえがあるかための食感で、出汁の風味豊かなつゆに浸しても、それに負けないほどのそばの風味の強さが印象的。
このそば、本当に美味しいです。
そば湯は透明感がある薄めでさっぱりとしたタイプでした。

笹寿司には味噌漬けや甘辛い山菜やしいたけの煮物がのっていて、香ばしいくるみがサクッと良いアクセントになっています。

いもなますは甘酸っぱくシャキシャキで、ほんのりとじゃがいもの風味が広がり、ホクホクしていないイメージとのギャップに驚きです。
どれも美味しかったですし、飯山名物を一度に堪能できる素晴らしいお店でした。

この日は「須賀川そば」を食べに「岩本そば屋」というお店にも行ってきました。

同じくオヤマボクチを使ったそばでも、こちらはモチモチとしたコシのある食感で、舌触りはややざらっとした短めの形状。
結構違いはあったものの、どちらも風味が強く、しっかりとした食感を楽しめるそばで、とても美味しかったです!
オヤマボクチを使ったそばの魅力に、完全にハマってしまいましたね。
ご馳走様でした!
公式サイト等
公式サイト
食べログ
かじか亭
0269-67-2500
長野県飯山市富倉1769

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